豊富なオペレーション分析の実績が依頼の後押しに
── 当社のサービスをご利用いただいたきっかけは?
安立さん:我々は現場の生産性を上げるために、これまで社内的にさまざまな取り組みをしてきました。その上で課題に感じていたのは、現場の職人の技術や、職人間での指導方法の可視化といったところ。
属人性が高い業界ということもあって、工事現場オペレーションの可視化は難しく、そうした社内での取り組みに限界を感じてきていた時に、以前雑誌でお見かけしたトリノ・ガーデンさんの社名と業務内容を思い出したんです。
そこでホームページを拝見し、お願いしてみたいと思ったのがきっかけでした。
何より、豊富なオペレーション分析の実績をお持ちでしたので、当然我々がそれまでしていたアプローチとは違う形になるだろうな、と。改善に向けたヒントが出てくるのでは、という期待感を持って依頼させていただきましたね。
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当社は顧客の約半数を飲食チェーンが占めています。そんな中で、他の建設関係の企業様にご依頼いただくこともあるのですが、「飲食と建設は全然違うのでは」とご指摘を受けることもありました。
御社でもそのような不安はありましたか?
安立さん:我々としては、現場のオペレーションの可視化に社内で取り組んできたものの限界を感じていたこと、また他社さんで同様のサービスを探してはいたものの、「これだ!」としっくりくるものに出会えなかったことがあったので、不安よりもまずは先に進めたい、という前向きな気持ちでしたね。
あとは、社内で改善に向けた取り組みを始めても、その継続が難しいという課題もあったんですね。
継続のためには、取り組み内容の正しさ云々の前に、まずは現場社員に興味を持ってもらうことから始めるべきなのではないだろうか、という葛藤もありまして。
その意味でも、我々建設業や製造業といったフィールドとは異なる現場をさまざま見てこられたトリノ・ガーデンさんが、どのようなアプローチをするのかという点に期待をしていましたね。
「同じ現場は二つとない」という業界の常識に甘んじない
── 現場の方々に興味を持っていただく、というのは我々の得意とするところかもしれません。さて、実際にサービスの導入前後で御社内ではどのような反応がありましたか?
安立さん:最初は疑問を抱くメンバーもいましたが、ディスカッションを重ね、「可視化された内容」を見せていただくうちに、徐々に変化が見られました。「こうするべき」「こういう時はこうあるべき」といった我々の「当たり前」の感覚が払拭され、スタート地点に立てた感じです。
というのも、最初は我々の業界の特性上、同じ現場は二つとない。だからオペレーションを分析していただいても、他の現場では再現性がないのではないか、という半ば諦めムードが漂っていたこともありました。そんな中で、トリノ・ガーデンさんからは「ではまずは、前提条件を揃えるところから分析を始めませんか」とご提案いただいて。要はまったく同じ条件の現場を疑似的に作り、環境面での変数を極限まで減らした上で職人に作業をしてもらい、オペレーションの分析をやってみようということでした。
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このご提案をしたときに、プロジェクトメンバーの皆さんの熱量が上がったのを肌で感じました。
敷地内にまったく同じ条件の道路を用意して、そこで年齢や経験の異なる4人の職人さんに、まったく同じ作業をしていただいたんですよね。職人さん一人ひとりの作業やコミュニケーションにおける属人性を炙り出すためです。
安立さん:台本を用意して現場監督役も設けて、打ち合わせの仕方から実際の作業に至るまで、職人4人に実演してもらうという内容でした。
そこで現場監督のコミュニケーションの取り方や、作業者のヒアリング能力、また新人と熟練スタッフの着眼点の違いといった大きく3つの要因が影響する形で、作業中のミスの発生量が変わるという結果が見えました。
現場でのミスに関して、それまでは作業者の個々の意欲や技術に依存するものと考えられていたけれど、それ以外の部分にも原因があったことが可視化されたわけです。これには我々も意識が変わりましたね。
もっというと、現場によって監督さんが異なるのだから、打ち合わせの方法も違ってくるし、それによって現場への指示に差異が生じるのは仕方がないのかな、と思っていました。
でも、この検証によって、監督さんとのコミュニケーション方法、打ち合わせのやり方を特徴に応じて3つにカテゴライズできたのは面白かったですし、それを踏まえた対策を考えることができたのは大きな前進でしたね。
プロジェクトの中で見えたコミュニケーションの課題をさらなる次元にブラッシュアップ
── 次は新人への指導方法やコミュニケーションといったところに重点を置いた分析をご依頼いただいています。
安立さん:今回のプロジェクトを経て、さまざまなコミュニケーション方法が可視化されたことで、指揮を執る職人たちが後輩に指導する際に、「なんで言っても理解してくれないんだ」という思いがあったところから、「なぜ理解してもらえるように伝えられないのか」という思考に、指導者たちの意識の変化があったように思います。これが何よりの成果です。
当社の競争力の源泉には、仕事の質と量を担保するだけの人材育成があります。今回のプロジェクトで得たこうした気づきを足がかりに、次はもっと踏み込んで指導方法や伝達方法の可視化を意識的にしていくことで、理論の構築ができるところまで持っていきたいです。
トリノ・ガーデンさんにはそのためのお手伝いをしていただけるのがとてもありがたいですし、心強いですね。