「イメージ止まり」を定量化するための取組み
── 当社のサービスを利用いただくに至った経緯を教えてください。
実田さん:もともと、「飲食店で品質の高い樽生ビールを提供すれば、お客さまにはたくさん飲んでもらえるはず」つまり「品質アップが売上アップに繋がる」という社内の共通認識があったんです。
その品質の高さは、たとえばジョッキは洗った後自然乾燥させて冷凍させないとか、サーバーのメンテナンスは定期的にきちんとするとか、そういったことの積み重ねで作られるもので、これによって「一杯が二杯になるんだ」ということを、入社以来、先輩たちからよく言われていたんですよ。でも、「それは本当か?」と(笑)。
「本当にビールのクオリティがアップしたら、うちの売上げ2倍になるのか」と突っ込むと、「いやいや、イメージですやん」と言うわけです。
このイメージを科学的に定量化したいという思いがありました。
── それでご依頼いただいた、と。
実田さん:そうですね。生ビールの品質以外にも、実はもう1つ背景がありまして、御社に依頼をする前に、生ビール1杯を提供するのにどれくらいの人件費がかかるんだろうということも社内で可視化にチャレンジしてみたのですね。しかし、これが、なかなかブレが生じて思うようなデータが取得できなくて……。
そんな折に御社の取組みを知って、こういった計測を生業にしている企業があるのなら、もうお任せする他はないと判断して、依頼をさせていただきましたね。
── 最初の分析結果をご覧になった印象は?
実田さん:われわれの仮説が肯定される分析結果が出て、そしてそのデータがすべて、明確に定量化されて出てきたので、私自身は担当窓口として、社内に対して、「どや!」と(笑)。
これまでなんとなくの感覚で話していたことがすべて定量的に数字を引き合いに出して語れるようになったことは、とても大きな成果でした。
もちろん、ビールのクオリティが良ければたくさん頼むようになる、というのは誰もがうっすらわかっていたことなんですけど、じゃあどれぐらい増えるのか、焼鳥の串で換算すると「●.●本」という数字が言えるようになったので。
数値化によって営業担当の言葉に説得力を付与することにつながった
── モヤッとしていた部分の定量化に貢献させていただけたわけですね。
実田さん:そうですね。もっと言うと、当社では、業務用ビールの売上のうち、多くを樽生ビールが占めているわけです。この生ビールの売上が社内全体の数字に対して大きなインパクトを持っているということは誰もがわかっているけれど、ここを伸ばすためのクリティカルな打ち手って、実はあんまりなかったんです。
ただ、御社の分析によって、温度帯や泡の状態といったビールの「品質の高さ」を可視化したうえで、その品質と注文杯数の関係性や、その後の料理の注文数との相関まで数字として出てきたわけです。
これらは、われわれにとっては目からウロコでしたし、誰も話題にしたことがない論点であり、着眼点でした。
さらに、こうした数字は、たとえば営業担当が料飲店に向けてセールストークをする際の大きな武器になりますよね。ビールの品質が注文数を左右するとなれば、当然料飲店側も、提供速度を意識するようになります。そうしたオペレーションも含めて、さまざまな話がデータに基づいてできるようになった、彼らの言葉に説得力を付与することができるようになったという意味では、かなり大きな成果につながったんじゃないかと思います。