個々の勘で終わっていたことを事実として可視化する
── 当社のオペレーション分析について、最初に知った際の印象を教えてください。
玉村さん:普段から、POSレジのデータを現状分析に活用して、ということは多いのですが、店内にカメラを設置して映像から何かをあぶり出すというような手段はもちろんやったことがないですし、新たな発見が期待できるんじゃないか、とワクワクしましたね。
特に、スタッフだけではなくお客さまの動きも可視化できるということはわれわれにとっては大きな価値でした。
たとえば普段、現場でパンを作りながら、あるいは接客に従事しながらお客さま一人ひとりの行動を把握するということは難しいので、そこが俯瞰できるようになるというのは楽しみだな、という思いからスタートしたのを覚えていますね。
── 実際にサービスをお使いになって、どのような感想を抱かれましたか?
玉村さん:「なんとなくこうだろうな」と思っていたことが、調査の結果、明確に裏付けされた、というのが第一印象で、「え、そうだったの?」という意外性は実はあんまりなかったんですね。でも、それってとても重要なことだと思うんです。
これまでなんとなくこうだろう、と各々の「勘」や「経験」で止まっていて、人によっても「こうじゃないか」と個々の主観で議論していたところに、事実として因果関係などを可視化できたわけなので、そこには進歩がありますよね。
その中でも特に、「レジ待ちに並んでいる人が多いと、それを見たお客さまは入店をためらう」とか、「陳列されているパンの数は少ないより多いほうがいい」といった、なんとなくわかっているけれど、その裏付けがなかった事柄が、どんどん可視化され、数値化されていったのは、やっぱりとても腑に落ちました。
完全フルオーダー型のプロジェクトで望む結果に辿り着くには
── プロジェクトを進めていく過程で、営業/商品/店舗設計/販促と多くの部署が関与し始めたところで、方向性が混線して一度着地点が見えなくなったこともあったかと思います。そうした壁にぶつかった際に、玉村さんはプロジェクト担当としてどのような思いで向き合ってくださっていましたか?
玉村さん:複数の部署をまたいでのプロジェクトだったので、部署ごと、担当者ごとに意見や価値観、見い出したいことが異なって、これらすべて応えるような分析を行って頂くと、どうしても色々な方向性に議論が拡散して、一瞬着地点が迷路のようになってしまいましたね。ただ、その都度わたしたちと、トリノ・ガーデンさんとで分析のロードマップを軌道修正しすり合わせながら進めていけたのはよかったですね。
もちろん、すべて丸投げで進められるプロジェクトではないことはわかっていたつもりではあったのですが、会社全体でいま優先して見出したいことなど、具体的に掲示することが、良いゴールへの一番の近道なんじゃないか、ということにプロジェクトの途中で気づいた形でした。
そこからは忌憚ない意見をお伝えするようにして、ああでもない、こうでもない、とお互い試行錯誤しながら結果に進んでいきましたよね。全体としていい結果に辿り着けましたし、その試行錯誤や軌道修正がなければ辿り着けなかった結果なので、すごく良かったと思います。
── まさに二人三脚でしたね。
玉村さん:オペレーション分析の報告会で、われわれの課題にクリティカルにヒットするような分析結果が上がってくると、社員がウーン、と唸ったり驚いたりするのですが、当然ながら、そうした想定通りの結果が毎回出てくるとは限らなくて、いろんな要因が絡み合って、フワッとした着地になることもあるわけです。
ただ、そういった結果を持ってこられる時も、御社内で色々試行錯誤して、悩み抜いて導き出した結果なんだということが見えますし、「うちに結果はこうです、あとはそちらでどうぞ」と突き放すような報告会には決してならずに、「じゃあどうしていきましょうか」とプラスに持っていこうとしてくれるので、そこに対しては安心感がありましたね。
ネガティブな結果も、現場を前向きにするポジティブワードで伝える
── 中には賛否両論が分かれてしまうだろうな、という結果もありました。
玉村さん:そうですね。ただ、現場のエリアマネージャーや店長は、「自分たちの店舗はどうやったらもっと売上げが上がるんだろう」と考えながら仕事をしている人が多いんですね。そういう人間に向けて、トリノ・ガーデンさんは「ここは売上げが低い」というようなネガティブ言葉ではなくて、「もっと売上げが上がる、伸びしろがここにはある」というような言葉をかけてくださって。
ネガティブな分析結果であったとしても、現場が前を向くために非常にポジティブなワードをかけてくれていたので、良かったな、と思います。
── ありがとうございます。当社のサービスをお使いになって、一番変わった部分ってどこになりますか?
玉村さん:やっぱり、ふわっとしたイメージで終わっている部分をきちんと可視化して、輪郭を与えてくださった、というところですね。
現場でパン職人として何年も経験を重ねているスタッフからすれば、経験からしか分からないこともたくさんあると思うんです。ただ、一方でわれわれも多店舗化して、規模を拡大していく中で、これら目に見えない個々の経験から得られる知識を共有知財にしていく必要もあったわけです。
そこを、分析によって数値化して、みんなにアウトプットしていけるようになったのは、成果としては一番大きい部分だったと思います。