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創業50年超の業態のFC化に向けたオペレーション分析

  • クライアント名

    株式会社東急グルメフロント

  • 分野

    外食・食物販

  • プロジェクトテーマ

    収益・生産性の改善

    組織への浸透スピードの改善

  • 主幹部署

    営業/教育

  • プロジェクト実施期間

    1プロジェクト/7ヶ月(インタビュー2024年)

株式会社東急グルメフロント様は、東急沿線の駅構内や商業施設を中心に、駅そばや、カフェ・ベーカリーなど外食事業を展開されていらっしゃいます。
特に、立ち食い蕎麦の「しぶそば」業態は、50年以上の歴史があり、飲食店としては珍しいファンイベントを開催するほど、多くの根強いファンのお客様に支持されております。
「しぶそば」業態の魅力や付加価値を更に高めていくことを目論み、そして2024年6月よりスタートするFC展開を推進していくうえで、科学的な根拠に基づいた店舗運営を目指すべく、オペレーション分析をご導入頂きました。

きっかけは、同じく鉄道会社グループにて飲食事業を展開されている他の企業様からのご紹介でしたが、弊社との取り組みにいたる経緯や、オペレーション分析導入後の感想など、事業を推進されている林様にお話をお伺いしました。

課題感

・FC展開に向けて現状のオペレーションを科学的に見直したい
・売上や客数、販売数に影響する要因が、現場の定性的な情報でしか得られていなかった
・本部が決定した施策や取組みを、現場に納得感がある形で伝えたい

何をおこなったのか

・店前通行者のプロセス(通過 / 視認 / 立ち止まり / 入店・機会損失)を可視化
・入店および機会損失に影響を及ぼすプロセスを可視化
・機会損失への影響を深堀り調査・分析
・ピーク時の売上・客数に影響を及ぼす課題を抽出
・抽出した課題に対し、改善アクションを実施・検証

どうなったか

・店前通行者のプロセスから、入店と機会損失に影響を及ぼす店頭掲示物を可視化したことで、最適な掲示物の定義をすることができた
・商品選択と掲示物との相関も明らかとなり、厨房の作業負荷を考慮した時間帯毎の出数コントロールが可能となった
・店外から店内の視認状況と機会損失の関係が明らかとなり、新店舗の開発と改装の判断軸を定義することができた
・席レイアウトが席稼働に及ぼす影響が明らかとなり、席数の最適解を見出すことができた
・本部で決定した施策を現場に対して数値的根拠を示すことで、納得する形で推進することができるようになった

自分たちの認識を科学的に確認してから新たな事業展開へ

── 今回のご依頼のきっかけは?

林さん:営業部長の浅野が、弊社と同業の企業様からトリノ・ガーデンさんとの取り組みをご紹介いただいて、というのがスタートです。弊社のしぶそば業態は、前身ブランドから50年くらい続いている駅そば業態なのですが、ちょうどFC(フランチャイズ)化するプロジェクトが発足したタイミングでもありました。

FC化にあたり、今までやってきた経験だけに頼るのではなく、現場のオペレーションを専門家に可視化してもらうことで、自分たちの認識が正しいのかを確認したうえで、FC加盟を展開していきたいと考えておりました。実際に、取り組みを通じて得たトリノ・ガーデンさんの調査・分析結果をFC化プロジェクトに反映させていただきました。

── オペレーション分析のご提案を受けた最初の印象は?

林さん:同業他社から紹介してもらい最初に話を伺ったイメージは野鳥の会でしたよね(笑)。とても地味なんですけど、カメラ映像を人が目視で判断しながら可視化しているデータということで、信頼できると感じました。実際に、現場からの報告では店長たちが感じた印象のみになってしまい、来店いただいたお客様のうちのごく一部の情報だけしか本部としては得られない。そこでトリノ・ガーデンさんの取り組みでは、お客様の入店前からの動き、例えば入店する可能性があったけれども入店されなかった方の動きなど数値化いただくので、これまでにない発見や気付きが多く出るのではないかという期待を持ちました。

── ご検討時、社内でどのような議論をされましたか?

林さん:実際に提案時の説明を受けた私たちは、面白そうだなって、実際にそこまでする会社があるんだっていうのはありましたけど、提案を直接聞いていない別のメンバーからすると、懐疑的な気持ちもありました。ただ、FC展開していくうえで、オペレーションをしっかり可視化いただいた方がいいんじゃないかというような流れの話になったことを覚えています。加えて、一過性のものにせず、オペレーションを可視化するという考えが社内で醸成されていって、しぶそば業態だけでなく、他の業態にもその考えを展開できれば社内の財産になると感じたことも導入を決めた要因でもありました。

数値化されたプロセスを見ながら現場と改善を実現

── 数ヶ月に及んだプロジェクト、第1回目の分析報告を受けたときの印象は?

林さん:これまで社内で数値化できていたデータといえばPOS関連(売上・客数・商品販売数など)だけだったのですが、報告会で各プロセスのデータ(店前での人の動きや機会損失、お客様は何を見て入店に至ったのか、商品の検討時間等々)など、これまでに見たことがなかった膨大なデータを可視化いただきました。

実は、今回調査した店舗は過去に、券売機が1台しかないことから、お昼のピークにお客様がお待ちになられるストレスがあるのではないかと、券売機を2台に増台する提言を店長にしたことがありました。しかし当時は、「2台にしてお客様の注文をスムーズにしても、満席でお客様が店内に入れない。」と現場から言われたんです。確かに売上も高い店舗だから、券売機を増台しても伸びしろがないと納得していたのですが、報告いただいたデータを見るとピーク時でも席の稼働に余裕があったんです。現場の肌感と実際のデータが違うというのが強く印象に残りました。実際のデータを店長に一緒に見てもらったところ、「それなら券売機を増台しても良さそう」となりました。店長も嘘をついていたわけではなく、見えている範囲で、覚えている内容を伝えてくれていただけなので、「現場の意見を信じない」のではなく、何かアクションを起こすときには、可視化したデータを共有することで相手も納得し、説得力がある会話になるという実感を持ちました。

── 「伸びしろと課題」を抽出のうえ取り組んだ「改善アクション」とは?

林さん:1つ目の改善アクションは、店前通行者に対する掲示物。バナーというタペストリーについて、制作費用が高額なこともあり1度制作したものをずっと掲示し続けていました。入店するお客様の視認率が高く、バナー掲載商品の注文傾向と相関があり、また店頭に立ち止まるも利用されなかった機会損失が発生した場合の視認物や検討時間から、バナーに掲示する情報を変えることで更に入店が増える可能性が高いという分析報告をいただきました。具体的には、立地の異なる2店舗で、それぞれの立地で機会損失が発生する要因仮説が異なるというデータをもとに、2店舗それぞれ訴求する情報を変えたバナーを新たに制作し、時間帯によって掲示するバナーを交換する実験を実施しました。

実験の結果、それぞれの店舗でお客様の動向に変化があることが数値データでわかり、制作費用を投資してでも行うべきだということになり、掲示物の運用について、全店で意思統一することができました。

「経験・勘・コツ」に「正しいデータ」を加えることで社内説明もスムーズに

── 改善検証のデータから、制作投資に対する効果が見込めたことから社内の合意を得られた好事例でしたね。その他のアクションについても教えてください

林さん:2つ目に取り組んだアクションは、お店の外を通過されるお客様がお店に入り易くする、入るストレスを減らす施策でした。取り組み期間中に改装を実施した店舗では、全面ガラス張りで、入口ガラスに掲示物が一定程度ありながらも、外から席の空き状況が見えるようになり、お客様の取りこぼしを減らすことが出来ました。ただその一方で別の店舗では、外から店内の様子が見えない店構えのため、店内に空席があるも入口の混雑を見て諦める方も多く、他店舗でも同様のことが発生していると自社店舗の課題と認識しましたので、今後の新店舗開発や改装のポイントとしていきたいです。

── プロジェクト当初に予定していなかった調査・検証も行ったと伺いましたが?

林さん:ある時、当初予定していなかった議題として、「ピーク時の店内の席稼働率を計測してみたら、ピーク時は混雑しているけども使われない席(=死に席)が発生していますよ」という分析報告をもらったんですね。そして、席レイアウトを変える提案もいただいたのですが、椅子の数を増やすのではなく、逆に減少させたほうが、客数の増加が見込めるという内容でした。ひとまず期間限定で検証してみましょうと、検証を実施することにしたんですが、結果は、総席数が減少したにも関わらず、席稼働率や客数が良化したんですよね。「店内の席稼働率の分析」は、プロジェクトの提案を頂いた当初には予定していなかったのですが、「カメラでオペレーションを目視して頂いている中で、テーブル・席の配置に課題が、気になって」ということでお話頂いたおかげで、レイアウトについての新たな考え方を持つきっかけになりました。

── 根拠となるデータがないと、「席数を減らす」というジャッジはなかなか難しいですよね

林さん:これまでは、なんとか席を増やそうって思っていたんですよね。休憩室や更衣室を削ってでも席を増やすと。それが社内の共通認識でした。今回の取り組みで、必ずしも席数だけを増やすことが最適ではないというのが明らかとなり、社内説明もスムーズでした。

── 最後に、御社が私たちのサービス導入を検討された同じようなタイミングの会社さんがあった場合に、何かアドバイスのようなものがありましたらお願いします

林さん:これまでの経験・勘・コツではない説得力ですよね。正しい方法で可視化したデータが社内の関係部署・関係者に響くということを伝えたいです。それは、長い歴史がある会社に限らず、新しい業態を始めたタイミングや成長中のタイミングでも、本当にこのオペレーションが効果的なのか、人員やレイアウトの配置はこれでよいのか、どのフェーズの企業であれ、一度オペレーションを数値で見てみるのがよいと思います。

  • クライアント名

    株式会社東急グルメフロント

  • 分野

    外食・食物販

  • プロジェクトテーマ

    収益・生産性の改善

    組織への浸透スピードの改善

  • 主幹部署

    営業/教育

  • プロジェクト実施期間

    1プロジェクト/7ヶ月(インタビュー2024年)

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