── 今回のご依頼のきっかけは。
大井さん:資さんうどんは現在60店舗以上を展開していますが、創業が古いこともあり、長い歴史の中で徐々に店舗レイアウトやオペレーションが時代にマッチしなくなってきていた、という課題がありました。
そんな折にコロナ禍でテイクアウト商品の売上げが伸びるようになって、それによって店舗オペレーションに支障をきたすという状況が発生しました。この事態を機に、「なんとか今の時代に即した店舗レイアウトをつくりなおさないと」ということでトリノ・ガーデンさんのお力をお借りするに至りました。

「歩数」や「屈伸回数」、現場における従業員の負荷を可視化
── 御社には、このリモデル(改装)プロジェクトの他にも、当社のオペレーション分析を複数回ご利用いただいている経緯があります。大きく異なるのは、プロジェクトメンバーの人選の部分だったかと思います。
高橋さん: そうですね。普段店長という立場で現場にいる自分もプロジェクトメンバーに加わりました。最初はカメラで一挙手一投足を記録され、分析をされるということで、違和感が多少はありました。ただ、日にちが経つにつれて、私も周りのスタッフも、徐々に慣れていき、「普段通りの動きをすればいいんだな」という認識に変わっていきましたね。
河原さん:実際に分析結果のご報告をいただき、印象的だったのは、従業員の「歩数」の分析です。私も飲食業界を長年見てきましたが、従業員が作業中何歩歩いたか、何度しゃがんだか、これらが明確に数として出てくるというのが驚きでした。従業員の負荷が数として可視化されるということに加えて、可視化されたことで「1時間の間に従業員はこんなに歩いていたんだ」ということに驚きました。


── 歩数をはじめとしたあらゆるプロセスを数値化することによって、前回の分析と今回の分析との変化量が見えるんですね。この数字を元に、店長さんがスタッフの方に「前回よりも●分早くなったね」というような具体的なフィードバックができるようになるんです。
大井さん:そうですね。今回のプロジェクトによって「お客さまに喜んでいただきたい」というのはもちろんのこと、「従業員がどういうふうに感じたのか」というのをとても気にしていきたいところだったので、そこに一緒に取り組んでいただけたことがよかったな、と思っています。
顧客満足度の方でいえば、売上げや客数、客単価といった集計しやすい指標から推しはかることはできますが、こうした数値だけでは本当の意味での満足度というのは正確に表現できない、と思っていました。
例えば、お客さまがメニュー表を見る回数、注文を決めるまでの秒数、お客さまが店員を呼んでから店員が何秒後に来たか、といったお客さまの「情緒」に影響する部分に関しても可視化していただきました。
数値化・データ化しにくい「情緒」を可視化し改善する
── 我々はデータ分析やカウントを生業としているだけに、作業効率最優先と思われがちなのですが、実は人の情緒や機微に影響する部分をかなり重視しています。たとえば、「手づくり」が生産性が低いとしても、企業が大事にしている文化であれば、削らない方がいいですから。
大井さん:そうですね。それは分析の中でも実感しました。中谷社長はトリノ・ガーデンさんを「カウントを生業とする」と形容されますが、カウントしたその先のフォローもしっかりとあるので、安心してお任せできます。
例えば、リモデル後に実施していただいたトレーニング。サッカーチームの解説のように、ホワイトボードを使ってスタッフの動きやオペレーションを指示されるんですね。これがわかりやすくてとても効果的で、改装オープン後もスタッフの皆がその動きを頭に入れて、その通りに動いてくれていた。よく理解してくれていたんです。そこにとても驚きましたね。

明確な効果を観測。今後はリモデルプロジェクトを横展開
── リモデル後の効果は、数字としてもはっきり表れてくれて安心しました。
大井さん:リモデル後初月売り上げは告知の効果もあり、130%増の客数が見られました。その後も120%前後で推移しています。他の既存店との差が+15%と明らかなので、このリモデルプロジェクトは他店舗にも広く横展開していくのが良いと踏んでいます。
既存店の改装は、新規出店と比べると費用が低く、売上げや利益の改善効果が読みやすいのですが、実際のあらゆるKPIの数値がどう動くか、そして改装後の店舗でスタッフやお客さまの気持ちがどんな風に変化するか、といったところを丁寧に可視化していただけたことが、非常にありがたかった、と思います。